| (裏面 左上) 恐ろしい樹海 23才 男性
どうして死のうと思ったのだろうか。あんなにたくさんの人に迷惑
をかけるなんて、少しも考えていなかった。
とにかく、この空しい現実から離れたかった。自分自身の存在が
周りの人に迷惑をかけていると思い、俺なんて何の価値もない無意味
な人間だと思っていた。
楽になりたかった。つらくて、どうしようもなかった。
誰にも知られず、静かに死のうと樹海に来てみた。しかし、バスを
降り、一人でうっそうとする樹海の中に足を一歩踏み入れると、音は
低く響き、黒くじめじめし、この世とは思えな恐ろしさでいっぱい
だった。
死ぬことを忘れ、ひたすら逃げたくて、必死だった。何かが追って
くるような、肩が異様に重く、頭も何がなんだか分からなくなってし
まった。
もう、あの思いは二度としたくない。人の声を聞いた時の、あの何
とも言えない安堵感。
死ぬなんて、ちっともきれいじゃないし、何の解決にもなりはしな
い。恐ろしい樹海の中では、安らかな眠りなど待ってはない。
|
| (裏面 左下) 生 命 力 29才 女性
私は独りぼっちだと思い込んでいました。
彼とうまくいかなくなり、職場の人間関係もぎこちなくなり、なぜ
か、他人が自分の事を良く言ってないと思い込み、ノイローゼになっ
てしまいました。
勇気を出して病院に行くと、治るのに時間がかかると言われたこと
が、治らないと思い込んで、何のためらいもなく樹海へ行きました。
治らない病気なら、いっそ、ひと思いに死ねば、安らかな眠りにつけ
る。
ひもを用意し、睡眠薬、ウイスキーを買い、樹海をさまよいました
一世一代の決心でしたが、我に返った時には、病院のベットの上で
した。
あとで聞いた話ですが、無意識のうちに助かろうとして、道を歩い
ていたというのです。
生きるようにできているのだとつくづく思うようになりました。本
来の生命力は、自らが持ち得ていて、それに反しては、絶対いけな
いのです。
うまく言い尽くせませんが、死んではいけない事だけは、確かです。
|
| (裏面 右上) 感 謝 の 心 63才 女性
私は、今、感謝の気持ちでいっぱいです。
一度は死のうと思い、思いが遂げられなかったことに情けないと思
いましたが、今、本当に生きていて良かったと思います。
人様に迷惑をかけないようにと、樹海を選び、静かに眠りにつこう
と決心したのです。ほとんどもうろうとし、そればかり考えていた私
は、人から見るとおかしい人と写ったのかも知れません。私は、自分
の事しか考えていなかったのです。
その間に見知らぬ地元の消防団、警察の方々、親戚、近所の人達が
一生懸命探していたのです。発見された時には、腕にはウジがわき、
悪臭で近寄れなかったと言います。
自分でいなくなることが、周りの人のためだなんて一人でヒロイン
ぶって、実は、知人・家族・見も知らぬ人に大きな迷惑をかけたので
す。
自分一人で生きてきた気になって、なんというおごりだったのでし
ょう。死ぬことは、つぐないきれない罪なのです。
生きていることに、感謝する尊さを多くの人に実感してほしいと心
から祈る毎日です。
|
| (裏面 右下) 自 分 の 責 任 48才 男性
富士の麓の美しい樹海では、誰にも見つからず一人静かに永遠の眠
りにつける、という感じで知っていた。
まさか、自分がここへ来る事になろうとは夢にも考えていなかった
仕事がうまくいかなくなり、気が付いたときには、思いがけない程
の大金が借金として残されていた。
本当に行き場がなく、つらかった。責任をとらなければならない。
妻や子供に迷惑をかけられない。男として責任をとらなければならな
い。
毎夜毎晩、苦しんだ挙げ句、死ぬしかないと思った。どうせ死ぬな
ら、あの美しい青木ヶ原樹海でと思い、向かった。
が、現地に着いて人に声をかけられ、いろいろ話をしているうちに
誰にも知られずというのは、真っ赤な嘘だと思い知らされた。観光客
は数が多いし、地元の人も心優しく声をかけてくれる。万が一、遺体と
なっても、けっこう早く見つかるということも話してくれた。
美しい富士の麓もけがれてしまう。
死ぬ事が責任をとることではない。
生きてこそ、生きようと頑張ることこそ、男として責任をとることだ
と今は思う。
|